出雲市駅のホームにやってきました。出雲市から東京まで、約30年ぶりの寝台列車の旅。乗車時間約12時間余りというのは、東京→ニューヨークのフライトと同じくらいです。車内販売も行われていない寝台列車の旅、残念ながら至れり尽くせりの旅とはいきませんが、自分なりに存分に楽しんでみます。
■出雲市駅入線
18時40分、出雲市駅の2番線ホームにやってきました。いよいよ寝台列車の旅の始まりです。間もなく夜7時となりますが、西日本は日が長いため、まだまだ明るいです。
18:47、夕日に照らされて列車入線。
1998年から運用されている285系電車。なんだかんだ言って20年以上が経過している電車ですが、古臭い雰囲気は感じられません。当時のデザイン力に脱帽です。それにしても、「サンライズエクスプレス」なんて…いい響きです。なお、ホーム入線から4分で発車となるため、くれぐれも写真撮っていて乗り遅れるということがないように注意が必要です。
■B寝台個室「シングル」
サンライズ出雲にはA寝台個室の「シングルデラックス」、B寝台個室の「ソロ」「シングル」「シングルツイン」「サンライズツイン」と普通席扱いの「ノビノビ座席」が連結されています。
今回はサンライズ出雲の寝台の中で最も席数(部屋数)が多いB寝台「シングル」を、妻とそれぞれ1室ずつリザーブ。なお、きっぷを購入する際、隣同士の部屋でお願いすれば対応してもらえます(今回がそうでした)。
1号車27番、進行方向左側の2階になります。内装はミサワホームが担当しただけあり、木材をふんだんに使った温かみのある内装です。
ここですね。ドアは4桁の暗証番号でロック可能な電子錠になっています。
思ったより広い個室。北斗星のB寝台個室よりも断然広いと思います。30年前の客車の寝台車は線路の枕木と同じ方向に横になりましたが、285系では進行方向に横になることができます。
装備を確認します。ベッドには敷布団、枕に寝巻。昔は浴衣でしたが今はガウンスタイルのゆったりしたものになっています。室内ではNHK-FM放送が聴けるようになっています(が、スマホが普及した今の時代ではあまり使う人いないのでは?)。その他、ハンガー、(寝酒用の?)プラスチックコップ、コンセントなど、12時間以上を快適に過ごすことができるようになっています。これにWi-Fiがあれば完璧なのですが…。
そのほかの部屋や装備を見に車内を探検開始。お客さんが使用していない部屋の扉は開いているので、のぞき見しちゃいます。まずはシングルツイン。まさにシングル×2の作り。
車両の端っこにある「シングル」は天井が広く、開放感抜群。ただ、走行中の車輪の音が大きいので、気になる人は無理に選ばない方がいいかも。
ソロのある車両はモーター車のため、床を下げることができず、その分窮屈な2階建てになっています。こちらはソロの下段。シングルと装備は変わらないようですが、上段の階段部分がせり出していて窮屈です。
ソロの上段。よじ登る感じですが、下段よりはまだいいかな。ソロはシングルよりも1,000円安いので、その分窮屈ってところでしょうか。
ノビノビ座席。指定席特急料金だけで乗ることができるお得席(寝台料金不要)。一応カーテンパーテーションがあるので最低限のプライバシーは保てそう。毛布とコップも用意されています。
ロビー室。普段なら楽しくおしゃべりできるスペースですが、コロナ禍ではちょっと使いにくいかな。
シャワールームもあります。自販機でシャワーカード330円を買って使います。混雑しているときは出発して早々、あるいは出発前に売り切れるので(特に東京発)、始発駅で3号車(あるいは4号車)に並んで先にシャワーカードを買うのがBestです。今回は深夜の岡山過ぎてもまだ販売していました。乗車前に先頭には行きましたが、やっぱり使ってみたいとカードを購入。使い勝手は後ほど。
すぐ横に自販機がありますが、事前のリサーチ通り、ソフトドリンクのみ。車内販売もないので、乗車駅での準備が肝心です。
A寝台のシングルデラックスとB寝台のサンライズツインは、さすがに扉が開いておらず、中を見ることができませんでした。
■シャワールームを体験
シャワーカードを購入したので、シャワールームを使ってみます。シャワールームは3号車にあります。扉を開けて中へ。こちらは脱衣所です。結構広いですよ。なお、A寝台シングルデラックスを利用するとシャワーカードが付いてきて、かつ3号車とは別の専用シャワールームを使えるとのこと。高いお金を払って乗るんだからそのくらいの特典はないと…。
こちらはシャワールーム。共用になりますがシャンプーとボディソープが置いてあります。
脱衣所にあるカードリーダーにシャワーカードを通します。
するとシャワールームのタイマーが6分になり、スタートボタンを押してスタート。6分なんて短いって思うかもしれませんが、途中でストップもかけられるので結構使えます。
シャワーを終えて、ドライヤーを使って髪を乾かします。
乗車前にひと風呂浴びたものの、盛夏の折、すぐ汗をかいてしまうので、車内でシャワーを浴びるとサッパリしますね。シャワーを浴びた後は、忘れずに洗浄装置を押します。
■車窓の景色を楽しむ
長時間の乗車になる寝台列車の楽しみと言えば、飲みながらのんびりと過ごすこと。ロングレールがあまり用いられていない山陰本線や伯備線では、レールの継ぎ目を通過する車輪の音を聴きながら、そして車窓の景色を楽しみながら一杯やるのはこの上ない贅沢です。
出発してすぐに見えるのが中海。夏、8月上旬くらいまでは日の入りが遅いのでこうした景色が楽しめます。この日はちょっと雲が多くて残念。
出雲市駅で買った「黒霧島」をチビチビといただきながら、車窓に広がり流れていく夜の明かりを見ていると、昔のことを思い出したり、はたまた将来のことを考えたり…昔はこうした時間がたくさんあったのですけどね。
車窓を見ていると、線路わきの民家から手を振っている人を見かけます。それだけ人気の列車なのですね。22:30岡山駅に到着。ここで先に到着していた「サンライズ瀬戸」と併結します。上りの場合はサンライズ出雲の方が遅着なので、ホームから連結作業を見ることはできません(下りは遅発なので見ることができます)。
この頃にはすっかり酔いが回っていたので、岡山を出て就寝。翌朝静岡の少し手前で目が覚めます。静岡着4:38。いつもの起床時刻なので自然と目が覚めてしまいます。
綺麗な富士山をカメラに収めるなら、富士の手前にある富士川を渡る瞬間しかチャンスはありません。天気は快晴。富士川の川面に映る富士山と一緒にカメラに収めることができました。
横浜着6:44。ホームで列車を待つ人と目が合うことも。特に下段の部屋の場合はのぞき見されている感じにもなるので、気になるときはブラインドを閉めておいた方がいいです。
多摩川を渡り東京都へ。
7:08、東京到着。12時間余の旅の終了です。びっくりしたのは各車両のデッキに警備員さんが配置されたていたこと。人気列車ゆえ、写真だけを撮るために車内に侵入してくる「撮り鉄」をブロックするためのようです。30年前はそんなことはなかったのですが…少し残念な気分になりました。
■たまには夜汽車もいい
寝台列車北斗星の定期列車運転終了が2015年3月。以来、定期列車としての寝台列車はこの「サンライズ出雲、瀬戸」のみです。
この列車、いつまで定期運行ができるのでしょうか。使用している285系も運用開始から20年以上が経過しており、新型車を導入するという話も出てきていないようです。
仮に廃止、という話が出ると、また乗客が殺到してチケットはまず取れない状況になるので、乗るなら今のうちに乗っておくのがよいかと。
かつて寝台列車に乗って数多くの旅をしてきた人も、まだ乗ったことない人も、新幹線や飛行機といった高速の旅から離れて、寝台列車の旅を楽しんみるのもいいですね。
ただ、個室主体の列車なので、昔の客車寝台のようにお隣りさんと仲良くおしゃべり、といった寝台列車特有の旅を楽しむのはちょっと難しいかもしれません。
コメント
パピルスさん今晩は
これで B寝台個室「シングル」なんですか。なるほど、うんうん
なかなか良いベットですね。
A寝台個室の「シングルデラックス」を見て見たいなあ~
>乗るなら今のうちに乗っておくのがよいかと。
困ったなあ~ 家の母親どうしよう。
ほったらかして旅に行けなくなりました。
ワクチンは2回接種してるけど
う~ん困った。
こたつ猫さん
シングルデラックスはググればたくさん画像が載っているので、
そちらをご覧いただければ。
乗ろうと思っても簡単には確保できないチケットと思います。
パピルスさん今晩は
なるほど、ネットで、いろいろ画像が有りますね。
まあ B寝台個室「シングル」で十分かなと
こたつ猫さん
シングルならチケットも手に入りやすいので、
機会があったらぜひ。
ぱぴるすさん 今晩は。
ブログを拝見して久々に寝台車に乗りたくなりました。
ベッドも豪華ですしシャワールームも完備して走るホテルのようです。
富士山が見える進行方向左側をGETして正解のようで。
それと黒霧島が気になりました。
黒霧島は、鹿児島産と思っていましたが、気になったので調べたら宮崎なのですね。
私が最後に寝台車に乗車したのは、学生(20歳位)のころで北海道からの帰路でした。列車名などは全く覚えていませんが、上段のベットの揺れがすごかった記憶があります。
往路は帯広まで(北見かも)東亜国内航空のプロペラ機でした。
ブルーの「あさかぜ」は、20系なのか覚えていませんが、最後尾に「あさかぜ」と記されたベース板を横長にしたようなプレートは今でも鮮明に覚えています。
BOARDING GROUPの件ですが、10月初旬に石垣フライトがありますのでトライしてみます。
話があちらこちら飛びますが、出雲の羽根屋さんの蕎麦を食べてみたいです。
蕎麦の実を殻ごと挽いた田舎蕎麦は香りや味が強いので一番好きな蕎麦です。
ただ、殻ごと引くのでザラツキ感が残り、蕎麦の実の中心部をのみを挽いた更科や甘皮も引いた蕎麦に比べると喉越しは劣ります。
出雲の羽根屋さんは細切りにしてのど越しを良くしているのでしょうか?
私は、更科と比べて蕎麦本来の味や香りに勝る羽根屋さんのような出雲の田舎蕎麦が大好きです。
是非ともぱぴるすさんに私が打った蕎麦を食して頂きたいです。
オッタンさん
今回乗ったサンライズ出雲は、まさに走るホテルですね。
その昔、20系客車も「走るホテル」と言われていました。
オッタンさんは、ベース板を横長にした
「あさかぜ」のプレートをつけた客車をご覧になったとのこと、
まさに、それが20系客車です。
両親の話によれば、私も一度乗ったことがあるようなのですが、
子供の頃の話、全く覚えていません。
24系は良く乗ったのは覚えているんですけどね。
もう一度機会があれば、客車寝台の旅をしてみたいものです。
客車寝台と言えば、オーストラリアの「The Ghan」にも乗ってみたかったです。
アデレードからアリススプリングスまで、
オーストラリア大陸を南北に横断する旅も経験してみたかった…。
オーストラリア駐在時の心残りのひとつです。
ぜひ一度乗って、このブログで紹介してみたいですね。
さて、羽根屋のお蕎麦屋さんの話が出ました。
蕎麦は細切りだと思います。
香り、味とも申し分なし。本当においしいと思えるそばです。
オッタンさんが打つ蕎麦もおいしそうですね。
お声がけいただければぜひ一度。